dpi Magazine

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スレッドとは縒り糸を構成している一本の糸のことです。最近では、ウェブ上の掲示板にテーマを儲けることを「スレッドを立てる」などと使われたりしておりますが、ここではスーツやその周辺の話題を一本の糸に見立てて毎回ご紹介させていただきます。一本、一本の糸が織りなされて、皆様の素敵なスタイルに少しでもお役に立つことを願いまして。

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スーツ好きなら、ディテールへのこだわり、ありますよね。こだわって仕立てたなら、いつまでも愛用したいものです。スーツは着用した時間の3倍くらい休ませると長持ちすると言われていますが、それでも少しずつ傷むのはやむを得ません。特にスラックスは、スペアが必要なくらい使用頻度高めです。今回はそんなスラックスを長持ちさせるためのこだわりのディテールの一つ、見えないところで大きな力になっている「靴擦れ」についてご紹介します。

実用的なディテール

知らない方もおられるかもしれませんが、「靴擦れ」といっても革靴で足が痛くなることではございません。スラックスの裾のかかと側が傷まないための当て布、つまり「補強布」のことをこう呼びます。裾の内側に折られたヘムと呼ばれる箇所に縫い付けます。こうすることで裾本体の前にまず「靴擦れ」が擦り切れることに。ツイードやコーデュロイのカントリージャケットのヒジに付けるエルボーパッチと同じで、服地へのダメージを防ぎます。その当て布がボロボロになってもそこだけ交換すれば、本体が擦り切れてしまうより補修費用が安く上がります。dpiでは、良いものを長く使っていただくために、スラックスに標準仕様で付けています。

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はみ出すのが正式

この位置に「靴擦れ」が付けられた訳は? 今スラックスは、タイトなテーパードで股下短めが流行となっていますが、少し前までは靴のかかとが見える程度の長さが一般的で、靴を脱いだ状態だと裾が地面スレスレで床に擦れることが多かったからです。もちろん靴に当っても擦れますし。ということで気にして裾のかかと側を見てみると・・・。「あれっ? 「靴擦れ」がスラックスの裾から少しはみ出しているんじゃない?」と気付いた方、よく観察されています。そうなのです、1~2mmほど裾口からはみ出して縫い付けられているものなのです。こうすることで「靴擦れ」が本体の布地より先にダメージを受けますので、裾は守られるという理屈です。ですから外側から見て完全に隠れるのではなく、1~2mm程度はみ出しているのが「靴擦れ」の正式な付け方なのです。

セルビッジで「靴擦れ」を

「靴擦れ」にはオーダースーツならではの“こだわり”があります。それは、セルビッジ(耳と呼ばれる生地の端)を使用するということです。ビンテージジーンズの「赤耳」は知られていますが、そのこだわりはスーツにも存在します。テーラーに飾ってある服地を見たことはございますか。生地の端にある色の付いた帯状のものがセルビッジです。そこには例えば、“Ermenegildo Zegna”といったブランドや、“SUPER120's”、“SUPERFINE”といった生地のクオリティやグレード、種類などのアピールポイントが刺繍されています。こだわりが表記されたセルビッジを「靴擦れ」に使って補強する。男という生き物は、こうしたディテールが好きですよね。人に見せるわけでもなく、自分一人で悦に入る。スーツにはこんな愉しみ方もあって良いと思います。dpiでお仕立ていただいた際は、一度「靴擦れ」を確認され、そのこだわりを感じていただければと思います。